
ヒル夫妻の事件について、続けます。
◆アブダクション時の身体検査
さて、妻のベティが悪夢にうなされ、フラッシュバックに襲われたりした事もあり、精神治療のためにベンジャミン・サイモン博士の元を訪れ、退行催眠療法を受ける中、ヒル夫妻はUFO内に誘拐され、検査された事を思い出します。
興味深いのは、夫のバーニー氏は終始目を瞑り、あまり明確な情景について思い出せずにいましたが、一方の妻のベティはかなり詳細な内容について答えていた事です。
一回目の電子音を目にして以降、記憶には無かったのですが、退行催眠によると、その後UFO内から複数の異星人が出てきて夫妻は「検査するため」という事で、UFO内の別々の検査室に連れていかれたと言います。
彼らの容姿は身長が小さく、髪の毛はなく、目は切れ上がった吊り目をしていて、日本人の印象に近かったそうです。

バーニーの方は「隊長」らしい人から「眼を閉じていろ」と言われ、恐怖のために終始目を閉じていたそうで、視覚的に何か記憶があったかというと、それほど多くの視覚情報については語りませんでした。ただし検査台の様なものに寝かされ、皮膚のサンプル採取や背骨の骨の数などを検査された事は思い出していました。しかし終始、恐怖体験の様に感じていた為か、この検査の最中、ほとんど目を開ける事は無かったようです。
一方のベティの方はと言うと、彼女の脇には英語の出来る人物が付いていた様で、検査を受ける時に様々なやり取りをしていました。
嫌がるベティに「検査をしたらすぐに帰れるのだから静かにしてくれ」「ここで騒ぐと帰る時間も遅くなるので貴方もこまるだろうし、私達も早く済ませたい」という会話をした事が、退行催眠の記録に残っていました。
また検査の内容も皮膚サンプルの採取と、爪の採取、髪の毛の採取などを行った後、「神経についても検査をしたい」と言われ、何やら細い針の束の様なもので全身くまなく検査をされたというのです。その後、長い注射針の様なものをベティはヘソに差し込まれ、その時は激痛が走ったと言いますが、脇に居た人物が目の前で手をかざすと痛みが去ったと言います。そしてこのヘソの検査は何の意味があるのか質問すると「妊娠の検査だ」と言われました。このヘソに穿刺して妊娠検査をする手法は、近年では産婦人科でも行われていると言いますので、とても興味深い証言です。
一連の検査後、ベティはこの英語を話す人物に「何か証拠になるものが欲しい」とお願いすると、一冊の大きな本を貰えたそうです。中身は英語とは異なり、ベティが語るには縦書きで日本語に近い感じがしたとの事でした。でも日本語とは少し違うもので、読んでも書かれていた事は理解出来なかったそうです。
その後、バーニーの検査している部屋で何やら騒動があり、その部屋から来た人がベティの口を開けさせ、歯を一生懸命いじりだしたと言うのです。ベティがその理由を聞くと、バーニーの「入れ歯」が取れた事で彼らは驚き、ベティにも「入れ歯」があるのか確認しに来たそうです。ベティが「それは入れ歯だから」というと、彼らは「入れ歯とは何か?」と聞き返し、そこから人間の老化の話へ進み、そもそも老化とは何か、寿命とはどういう事かと、ベティは質問されたそうですが、彼らを納得させる回答は出来なかったそうです。
この辺りは少し面白くて、苦笑いしながら本を読み進めてしまいました。
その後、ベティは「貴方たちはどこから来たのか?」と質問すると、一つの星図らしき図を見せられました。

これはその見せられた星図をベティが書いたものですが、ここで太線は交易ルートを表していて、実践は偶に訪れる場所、点線は調査している探検ルートだと教わりました。
ベティは「この図で地球はどこか?」と質問すると、「貴方は宇宙の事をどれだけ知っているのか?」と言われ、ベティは答えられなかったそうです。するとこの英語を話す人物は「宇宙の事を知らないのに説明できるわけ無いではないか」と言われてしまったそうです。ただこの図の何れかに地球があるのは確かだとベティは思ったそうです。
その後、バーニーの検査も終わり「車まで案内しよう」と言われて、部屋を出ると、そこで本は別の人物から取り上げられてしまいました。「何故取り上げるのか、話が違うではないか」とベティが言うと、英語を話す人物が「私は良いのだが、他の人がダメだと言うから」と言われました。
その後、ベティが「また会う事が出来るのか」を聞くと「私たちは来ようと思えばいつでも来れるが、ここでの貴方たちの記憶は消されてしまう」と言われたそうです。なんでも覚えていると彼らに都合が悪いからだそうです。
以上が夫妻のアブダクション時の検査の記憶です。
◆スターマップについての議論
さて、先に上げたベティの星図(スターマップ)ですが、1969年にオハイオ州の小学校教師でアマチュア天文家のマージョリー・フィッシュによって解析されたと話題になりました。マージョリー氏は太陽系近縁の構成を、ある条件のもとで選別し、根気よく三次元モデルを作り上げ解析したところ、以下の星図であると発表したのです。

これによると、彼らの星はレチクル座のゼータⅠとゼータⅡの連星系であり、既に太陽(SUN)は交易ルートに入っていると言われていますが、最近になり、このスターマップの基礎データは40年以上前のもので、最近になり判明した実際の星図の距離とは異なるので、この図は成り立たないと言われています。
しかし思うのだが、今の人類が公式に出している天文学の情報というのが、どれだけ正確なのか、そこは誰もが実証出来ていないのです。
何故なら恒星間の距離も、天体望遠鏡などで観測し、あくまでもその結果から類推したものであって、実際に計測する手段を人類は持ち合わせていません。まあこういう処で取り上げても信用度が上がるものではありませんが、1992年に公表された「ラケルタファイル」という、レプタリアンとのインタビュー記事の中で、人類の宇宙観や考古学とは、一部の権威を持った学者達の信念体系に過ぎないとありました。
確かに今の人類が持ち合わせる考古学などの知識は、地球上にあるとされるエビデンスの1%に満たない情報に基づき構成されているとも言われていますし、過去にグラハム・ハンコックによる考古学的な考察も、その限られたエビデンスの範囲内の情報により出来上がった考古学会から、結果「たわごと」として片付けられてしまいました。
そういう事から考えると、このヒル夫妻のスターマップについても、完全に否定は出来ないのではないかと思うのです。
しかし、そうは言ってもヒル夫妻の退行催眠による証言にしても、実施者であるベンジャミン・サイモン博士も以下の様に述べています。
「催眠術はあくまでも患者本人が真実と思い、そう理解しているものへの細道だという事である。その真実とは患者が真実と信じているものであって、究極の客観的事実と合致するかしないかは、別の問題なのだ。」
確かにヒル夫妻の事件には、何ら物的なエビデンスも存在しないし、言えば夫妻の証言の中にしか語るべきものは無いので、それを完全に真実とは言い切れません。しかし逆もまた然りであって、夫妻の証言を完全に否定できるエビデンスも、完全には存在していないのです。
私はこういったミステリー関連の事件について、全てを否定するべきではないと思います。特にこのヒル夫妻の事件については、類似した事件は世界各国で発生している事であり、それら全てを全部「虚言」と証明する事は出来ないのです。
人類がこの世界で完全に理解出来ている事は、ごくわずかな事でしかありません。そうであれば、もう少し謙虚な視点で向き合い、調査を進めていくという姿勢が必要なのではありませんか?
【参考文献】
宇宙誘拐 ヒル夫妻の”中断された旅” ジョン・G・フラー(南山宏 訳)