
前回の記事でJ.Lホイットン氏の「輪廻転生 驚くべき現代の神話」の内容について少し紹介しました。今回はこの本の中から、J.Lホイットン氏が臨床の中で記録した患者の話について少し紹介をしたいと思います。
これから紹介する話は、ある女性の退行催眠による前世の記憶と、そのはざまの中間世の話となっています。それぞれ前世の記憶については、特に具体的な事実確認は為されていません。そもそも追跡調査はホイットン氏の治療の過程では必要としていないので、行われていないのは当然の事と思います。内容としては奇異な話にも見えますが、まずは読んでいただければと思います。
◆人生にアレルギー
これはヘザー・ホワイトヘルムという女性の話です。彼女はホイットン氏の下を訪れたのは1979年の春の事でした。
「私、体はがたがたですし、人生もめちゃくちゃなんです」
ホイットン氏の見たところ、彼女は表情も明るく健康そうに見えたそうです。しかし彼女の肉体はアレルギーの戦場となっていました。アレルギーのせいで耳鳴りが絶えずあり、その為に聴力は損なわれ、激しい頭痛、胸と喉の充血、多数の発疹、水膨れなどが発症し、その時には息をする事さえ彼女にとっては危険な事になっていました。このアレルギーは、ほこりや花粉、猫の毛、乳製品、アンゴラセーター、ペンキ、洗剤といった、ごくありふれたものに晒される事で発症していたのです。
「きっと私は、人生そのものにアレルギーなんでしょうね」。ヘザー女史はホイットン氏に話をしました。
このアレルギー症状の他にも、何度も気管支炎や肺炎を併発するので、彼女は長い間、床に伏せたっきりになってしまうとの事で、そのはじめは1977年の頃からだと言うのです。彼女の夫は生物学者で、メキシコシティからトロントへ引っ越して来てから発作が更に悪化したというのですが、メキシコシティから引っ越してきた理由の一つが、彼女のアレルギー症状が悪化し、医師から「この町から出て行かないと、五年もしないうちにスモッグで死んでしまいますよ」と言われたためでした。
彼女は長い間、アレルギー症状に苦しみ多くの医者の間を渡り歩いたそうです。そこでは様々な検査も行われ、様々な投薬も行われてきましたが、アレルギーの症状は一向に改善する事なく、時には新たなアレルギー症状まで発症する事もありました。メキシコの医者も、それら医者の一人だったそうです。
またヘザーには他にも深刻な心の悩みも抱えていて、自尊心が欠けるところがある彼女は臆病で人からの批判に容易く左右されてしまうため、宝石デザイナーとして将来性のある職も、このために棒にふってしまいました。彼女は創作に頑張ろうとするときに、必ず失敗が怖くなってしまい、仕事場に居たたまれなくなってしまうのです。恐怖は波のように彼女を襲い、うつ状態へと落とし込んでいきます。抗うつ剤の服用で対処しようとするも、彼女は抗うつ剤アレルギーも起こしてしまっていました。
ホイットン氏の下に彼女が訪れた時、ホイットン氏はまず彼女の健康状態を診察する事から始めました。その結果、彼女には気管支炎と肺炎の抵抗力が極めて低下している兆候が見えたので、そこからアレルギー症状が悪化している事が解りました。ホイットン氏はここから、一応、彼女がこれまでに抑圧してきた心理的問題が、肉体的障害という形をとっていると判断し治療を始めました。
ホイットン氏は、この時のヘザーの状態は極めて悪い事を考慮して、通常であれば落ち着きじっくり話を聞く事から始めるのですが、今回は早い段階から退行催眠を行い、彼女の過去世への調査を開始しました。幸いな事にヘザーは催眠への誘導には入りやすい体質であった事もあり、その最初の催眠治療の後、ヘザーは自己催眠によっても退行催眠に誘導する事が出来る事がわかり、自己催眠による退行催眠の記録を以て、週一回の治療を勧めました。
◆イソベルとの出会い
週一回の診察の時に、ヘザーは大量の記録日記を持ってくるのですが、そこには支離滅裂な内容もあったので、六週間ほど様子を見た後にホイットン氏も別の診察方法について考慮を始めました。そしてその頃、ヘザーはとある日の自己催眠下である出会いをしたのです。それはイソベル・ドラモントという女性でした。
彼女は周囲に物悲しい雰囲気を漂わせた女性であり、すらりと背が高く、長い黒髪をうなじで束ね上げており、ピンクのシフォンドレスを着ていました。そしてヘザーの自宅の居間をあでやかに通り抜け、黒のグランドピアノの前に座り、ショパンのエチュードをみごとに弾きあげたのです。
この出会いはヘザーが自己催眠の中での出会いだったのですが、今まで自己催眠の中、出会った人物の中で痛切に自身との一体感を覚えました。また彼女の演奏する音楽は彼女を不幸な気持ちへとさせていくのです。恐らくそれは自分の遠からぬ過去世の人格である事をヘザーは理解し、次の診察の際にホイットン氏に相談しました。それを診てとったホイットン氏はヘザーに語りかけたのです。
「どうしてイソベルは貴方を意気消沈させるのでしょうか」
「もう一度、彼女について探してみましょう。そして理由が解るまで、彼女の後を追ってみましょう。」
この日、ヘザーはイソベルの事で頭がいっぱいになりました。何故、イソベルの事が彼女をこれまで飲み込もうとしているのか、その夜遅く、寝室で床につき電気を消すまでその事を考え続けました。そしてとの時、ヘザーは全身に強烈なショックで打ちのめされる感覚に襲われたのです。後にヘザーはこの時の事を次の様に語りました。
「あの時の感じは言葉には言い表せません。自分の家の中でとてもいやな自動車事故にあったみたいな感じという以外には。」
この「事故」が何のことは、彼女は当初、さっぱり理解できませんでした。そしてその直後、彼女がイソベルの”体の中”に居る事をはっきりと感じ取りました。彼女は地面に横たわり、右半身には火の手が迫っていました。そして彼女は自分の乗った車が暴走して崖から転落した事を、恐怖の中で理解したのです。そしてそれは1931年の事だったというのです。
この突然の出来事は時間にして1~2秒程度の間でしたが、ヘザーの神経は著しく消耗してしまい、隣に寝ていた夫の慰めの言葉は何も効き目がなく、明け方になるまで何度も恐ろしい情景が頭から離れずに泣きました。翌朝五時になり、夫がまどろみかけた時、シザーは寝室を抜け出して書斎に入り、タイプライターにこの様に書きました。
「ずっと震えていた、全然眠れない」
彼女の苦しみはこれで終わりという訳ではありません。それから三日間、ヘザーはイライラし泣きじゃくりました。また吐き気と激しい気管支炎の咳のためすっかり体調を崩し、引きこもり状態になってしまったのです。1979年9月1日の日記には、この様に書き込みました。
「私はいつもの予定をキャンセルしなくてはならなかった。生まれる四年前に起きた自動車事故のショックと心痛で苦しんでいるなんて、どうして友人に言えようか。ただ風邪をひいて胃の調子が悪くなったと言うしかない。みんなは私の病気に慣れっこなのだから。」
彼女はこれをタイプすると、そっとベッドに戻りながら、これから数時間後に素晴らしい難関突破が待っている事をなど知る由もなかったのです。
(続く)
【参考資料】
「輪廻転生・驚くべき現代の神話」 J.L.ホイットン著