
前回からの続きです。
ヘザーの前身であるイソベルはピアノの才能に恵まれながらも、社交界で奔放な行動から自滅の方向へ進んでしまいました。
◆イソベルのその後とその人格
イソベルは事故にあった後、イギリスのサセックス州に看護師と二人の使用人と共に暮らしていました。傷跡の残るゆがんだ顔、頭と首の傷は薄緑色のスカーフで隠していて、右手は水膨れとしわの寄った状況で使い物にならない状態でした。その為にピアニストとしての人生は終っていたのです。彼女はこの人生にお別れを告げたいと考える様になっていて、ある時、友人が見舞いに訪れた際の何気ない一言をきっかけとして、極寒の海の中に入水していきました。
このイソベルの状況を聞いたホイットン氏は、ヘザーへの治療効果を考慮しつつ、このイソベルの人格の軌跡を追う事にして、継続して催眠誘導でその過去の人格の追跡調査を行いました。そこではキリスト生誕の時期や神聖ローマ帝国の時代の記憶といった、多くの人格を確認しましたが、いずれも芸術や工芸の類に従事してきた事を確認しました。
◆たった一つの人格
これら多くの過去の人格で、イソベルの存在を除けば、現在のヘザーの問題に関わる人格としてたった一つの人格に行き当たりました。それはフェルデナンド二世(1619年~1637年の神聖ローマ帝国の皇帝)の女性の人格で、名をイヴァンジェリンという貴族でした。
彼女はスペイン貴族の男性と恋仲に堕ちたのですが、そのスペイン貴族の男性は既婚者だったのです。結果、この恋仲は男性貴族を中心とした貴族の妻とのライバル関係となり、それは宗教裁判まで発展してしまったのです。そしてヘザーの前世の人格であるイヴァンジェリンは拷問を掛けられ殺害されてしまいました。
この情景を見たヘザーは大きな叫び声を上げてしまい、恐慌状態に陥ってしまいました。
ホイットン氏はこの時、ライバル関係であり、イヴァンジェリンが拷問死の最後に眼にしたのはこの貴族の妻の姿だったのですが、ヘザーは自己催眠の中で、この女性の転生した存在が自分の母親だと理解しました。ヘザーの母親はこの時の貴族の妻とそっくりな行動をとり、何かにつけてヘザーの行動を邪魔する様な事をしていたのです。そこでホイットン氏は再度イソベルの人格に戻り、そこからイソベルが中間世でどの様な事があったのかを探る事にしました。
イソベルは北海の極寒の海で入水してから、死後の中間世へと移行し、そこでは光り輝く果てしの無い世界に漂っていました。そしてそこには大きな神殿があり、そこには古代エジプトで語られたイシスが居たというのです。そしてイシスの前で人生の回顧をする中で、実はイソベルが生き続けていたら、それなりに実績を上げた素晴らしい人生になる事が計画されていた事を理解しました。しかし実際には奔放に生きてしまった結果、自滅の人生を歩んでしまいました。
そこでその人生のやり残しをする為に、実はヘザーのという人生を計画したというのです。またその時に誰を母親にするかという事で、イソベルが選択したのは、先の人生のイヴァンジェリンの時に恋仲のライバル関係であった母親だったというのです。
彼女はこの選択をした時、叫び声を上げました。この時、イソベルはこの母親は選択したくないと拒絶しましたが、その中でもこの自分自身の課題を解決するためには、どうしてもこの母親を選択しなければならないという気持ちになったそうです。
この中間世への旅でヘザーが理解したのは、今の人生はイソベルの人生の「やり直し」として計画されたもので、その際に、過去から持てる課題、ここでは奔放さと言っても良いかもしれませんが、それを解決する為に、実はその前の人格であった恋仲のライバル関係であった人格である、今の母親のを選択してきたという事だったのです。
◆ヘザーのその後
こうしてホイットン氏の下で一連の退行催眠により、自分自身の今の人生の意義を理解したヘザーは、アレルギー症状も改善し、以前の様な抑うつ的な症状も改善したと言います。その後は宝石デザイナーとして仕事を取り組みながら人生を生きているとの事でした。そしてヘザーの夫も彼女のこの変化した姿を見て「何か憑き物がおちて、あらたな人生を歩みだしている」と感じたそうです。
以上がホイットン氏の臨床例の一つの話でした。
ホイットン氏はこの様な臨床例を多く蓄積しながら、中間世の存在を考察し、そこから輪廻転生の中での「業(カルマ)」という事について、一つの見解を導き出しました。
ではホイットン氏の導き出した見解と、法華経の「本門の十界の因果」がどの様に関係してくるのか、それについては次回の記事で少し考察した内容を書いてみたいと思います。
【参考資料】
「輪廻転生・驚くべき現代の神話」 J.L.ホイットン著