自燈明・法燈明のつづり

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帝国主義について

日本の幕末から明治期にかけて、世界は「帝国主義」を軸として動いていました。

日本の歴史を理解する上で、当時の世界情勢についても理解する事は大事かと思いますので、今回はこの「帝国主義」という事について少し振り返りをしてみます。

日蓮は「心地観経に曰く「過去の因を知らんと欲せば其の現在の果を見よ未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」」と言いましたが、現在の状況というのは過去の行いの結果であり、未来とは現在の行いの結果だと経典にはある事を教えていました。つまり過去の歴史の積み重ねの結果が今であり、その延長線上に未来があるのであれば、やはり過去の事を学ばない限り、未来について語るのは難しいと思うのです。

帝国主義とは

ちょっと歴史を調べてみると、この帝国主義というのは人類社会の中でも以外と古くからある国家体制でした。言葉の定義を読むと「一国が自国の利益・領土・勢力を拡大するために、他国や多民族を政治的・経済的・軍事的に支配・抑圧する思想や政策、運動を言う」という様な事を書かれていました。英語で帝国主義は「 imperialism」と言いますが、この語源はラテン語の「imperium(命令権・支配権)」から来ているそうです。

古代からこの帝国主義による拡張主義はあり、代表的なものはアレキサンダー大王の東征やローマ帝国、またモンゴル帝国などが領土を拡張したのも、帝国主義による拡張主義でした。しかし19世紀末から起きた帝国主義は「近代帝国主義」と呼ばれ、そこでは欧米列強(英・仏・独・露・米)がアジアやアフリカ、そして中南米に進出し、植民地化を進めた時代でした。

また古代の帝国主義では領土の拡張や、そこに暮らす民族の征服(支配)という事もありましたが、近代帝国主義では「産業革命の進展」をきっかけとして展開をしていきました。

第一次産業革命
第一次産業革命では蒸気機関の発明と実用化、そして工場制機械工業の確立、繊維産業が先導役となり綿産業や製鉄業が発展しました。機械工業の確立により部品の仕様の統一化も図られ、そこから大量生産という流れも出てきたのです。また蒸気機関は工場の機械の原動力だけでなく、蒸気船や鉄道の発展にも寄与し、物流能力が飛躍的に向上しました。

第二次産業革命
第二次産業革命では鉄鋼・機械・化学・電力・石炭などの重化学工業が発展し、その中で様々な工業生産品が大量生産されていく事となりましたが、国内仕様は飽和状態となり、また労働力も国内だけでは不足する様になりました。また製品を生産するにも原材料やそのエネルギー燃料も必要となり、そこから市場の拡大や多くの労働力が必要とされる様になり、また資源などを求めて欧米列強ではアジアやアフリカへと拡大進出が始まったと言われています。

領土拡張について
第二次産業以降、欧米列強は海外進出を進め、植民地政策を進めて行きましたが、その時系列としては以下の流れとなっています。

①1760年代:第一次産業革命
第一次産業革命により、産業が発達する中で金融業も発達を始め、そこから欧州の王侯貴族の勢力が徐々にそがれてき始めたという流れもあります。

1800年代前半:ナポレオン戦争後の再編
・1815年:ウィーン会議でヨーロッパ秩序再編
これはフランス革命ナポレオン戦争によって崩壊した旧来の王政や国境、勢力バランスを再構築し、安定した国際秩序を取り戻すために行われた外交交渉を言います。この再編によりイギリスは海上覇権を確立し、まずはインド支配を強化、東南アジアへ進出します。(シンガポール建設:1819年)

1830年代~50年代:アジアへの進出
1839年~42年:アヘン戦争(英・清)勃発、南京条約で香港の割譲、開港
・1853年:ペリーが日本来航
・1857年:英がインドを植民地化、ムガル帝国を英が滅ぼす

・1867年:徳川慶喜大政奉還
・1869年:戊辰戦争が終了

④1870年:第二次産業革命と帝国主義の加速
1873年:欧州で「長期不況」となり、植民地獲得で経済打開策が進む
・1875年:英がスエズ運河の企業の株を買収し、エジプトへの影響力が拡大する

1880年:アフリカ分割の本格化
1884年~85年:ベルリン会議で列強によるアフリカ分割の国際ルール制定

 

この様に帝国主義の状況と、欧米列強の海外覇権の拡大の歴史を眺めてみると、日本の幕末時期は、欧米が帝国主義へと本格的に動き出し、アジア進出を始めた頃に重なる事が解ります。(上記文中、赤文字で表記)

またその際、日本はかなり短期間に国内の体制を切り替えた(わずか16年程度)事も読み取れますが、この適応力の速さは当時のアジア諸国の中では群を抜いていたのが見て取れるのです。

日本が体制を切り替える間、インドではイギリスによりムガル帝国は滅ぼされ、中国にあった清もイギリスからアヘン戦争を仕掛けられ、香港を割譲し開港、そしてその後に欧米列強は中国への進出を強めていきます。

次回は「東インド会社ムガル帝国の滅亡」について、こちらは帝国主義の典型例とも言われていますが、この事についてすこし見ていきたいと思います。