
何かとネットの中で騒ぎになっている高市総理の台湾有事に関する発言ですが、今回は少しこの件について私見を述べてみたいと思います。
X上では様々な意見が湧き出していますが、この内容はあそこで語るには不向きだし、下手にあの場で触れられる事でもありませんので、まずはこのブログに書いてみます。
事の発端は、11月7日の衆議院予算委員会で立憲民主党の岡田克也議員からの質問に対する高市総理の発言でした。
岡田議員:「台湾有事が発生した場合、日本にとって『存立危機事態』に該当する可能性はあるか?」
高市総理:「戦艦を使った武力行使が伴う場合、存立危機事態になり得るケースだと考える」

この発言に対して、中国の駐大阪総領事の薛剣(Xue Jian)氏が、自身のXへ以下の投稿をしました。
「勝手に突っ込んできたその汚い首は、一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟はできているのか」
この薛剣氏の発言から、一挙にこの高市総理の発言が注目され炎上し、日本と中国の間で、また日本国内に於いても賛否両論様々な意見が噴出してしまい、現在大炎上状態になってしまいました。
私は今回の件では、正直、高市総理の脇の甘さが露呈してしまったのかなと思いましたが、そもそも論で考えてみると、仮にも一国の宰相たる人物に対して他国の領事が「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と発言する事は、とても適切な言とは思えません。そして恐らく薛剣氏もそれを自覚しての事か、このXの投稿について削除をしています。
調べてみるとこの薛剣氏は、「戦狼外交(Wolf Warrior Diplomacy)」の代表的存在とされ、過去にもSNS上で挑発的・侮辱的な発言を繰り返してきた人物でした。2025年6月にはイスラエルをナチス・ドイツになぞらえる投稿を行い、イスラエル政府から抗議を受けています。
私は中華人民共和国が、この様な総領事の発言を元にして騒動を大きくした事についても、何か初めから意図があっての事ではないかと、実は大きな疑念を感じてしまいます。また立憲民主党の岡田克也議員は、もともと立憲民主党と中国共産党との間で党間交流を積極的に推進している人物でもあるので、今回の予算委員会の質問についても、何かしら意図的な事があったのではないかと邪推までしてしまいます。
まず高市総理の発言について。
これまで日本政府としては、この台湾有事に関する事には曖昧な発言が多く、一貫して明言を避けてきました。
安部元総理の発言(2019年・2021年)
「台湾は重要な友人であり、価値を共有するパートナー」
「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」
岸田元総理の発言(2021年~2023年)
「台湾海峡の平和と安定は国際社会の重要課題」
これらの発言と比較した場合、確かに今回の高市総理の発言は、一歩踏み込んだ発言であると言えるでしょう。しかし今回の高市総理の発言にしても、中国が武力などを行使した場合に「存立危機事態になり得るケース」と、一つの仮定として言及したものであって、必ず存立危機事態になるとは明言していません。またこれは政府の統一見解ではないと補足説明を行った上での発言です。
今一つの明言を避けつつ、政府の統一見解ではないと補足まで付けているにも関わらず、日本国内の中国領事が「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」と発言し、その炎上騒ぎに便乗して中国政府まで国際的に騒ぐという事には、そこに何かしら意図的な事があっての行動と見るべきではないでしょうか。
ここ近年、日本では南西諸島方面で航空自衛隊のスクランブルが急増しています。ちなみに昨年(2024年)には704回のスクランブルが発生しており、これは平均すると1日で2回はスクランブル発進が起きていると言っても良いでしょう。そしてこれは日本国内のスクランブルの実に58%を占めていて、近年この増加傾向が止まりません。
また尖閣諸島に対する中国海警局艦船の侵入も多く発生していましたが、高市総理就任時には一旦収束するかの様に見えました。しかし今月16日には4隻の機関砲搭載の艦船が周辺海域に来ています。
これらを見てみると、やはり従来の日本の総理とは異なり、これまで何かとタカ派的な発言をする高市総理を、中国としてこの辺りで叩いておきたいという意図も見える様に思えたりするのです。
あとこれは個人的に思う事なのですが、高市総理の懸念は台湾有事の時、台湾とフィリピン北部の間に位置するバシー海峡の戦略的な重要性を考えて「存立危機事態」という言葉を使ったという事もあるのではないでしょうか。
今回、高市総理の発言の前提に「戦艦を使った武力行使が伴う場合」と前置きしています。これは中国軍が台湾有事という口実で海軍を動かした場合、このバシー海峡を中国海軍が封鎖・制圧した場合には、日本にエネルギーを運ぶタンカーや物資を運ぶ幹線の大半が通過できなくなってしまい、その場合には日本は確実に存立危機に陥ってしまうのは明白です。
今回の高市総理の発言の真意は、単に中国が台湾に侵攻したというケースだけの話ではなく、それを口実にバシー海峡を中国が海軍によって封鎖した場合の事を述べていると思いますし、その際には今の日本の状況では容易に詰んでしまう立ち位置にあるのです。
これは近年、南シナ海における中国の動きを見ていると、あながち杞憂とは言い切れないでしょう。
いま高市総理の発言に対して、ネットの意見では中国からレアメタルが止められたら日本経済は大打撃を受けるという事や、農産物が中国から輸入されなくなれば日本は直ぐに食糧危機になるという意見もあり、だから発言を撤回しろとか、中国とは仲良くすべきだとか、高市総理の発言はけしからんとか、直ぐに謝罪しろという意見が多く見受けられます。
しかし私は思うのです。
高市総理の発言は確かに従来の日本政府の発言と比較しても、かなり際立った強硬発言にも聞こえます。しかし今日本が置かれている立場は、それほど悠長な状況ではないのです。だから単にこれまで通りに中国に阿諛していけば、今まで通り万事うまくいくという状況ではなくなってきているのではないでしょうか。
アメリカは未だに「戦略的曖昧さ(Strategic Ambiguity)」を保つ発言をしていて、その立ち位置を崩してはいません。しかし近年の米中関係を見ていると、これがもいつ緊張状態に移行するかもしれないのです。
私が今回の騒動で感じだのは。
日本国としては今の世界がどの様な事が必要なのか、しっかりと考え直す時代に入った事を、まずは日本人が認識を新たにするべきでしょう。戦後八十年を経過して、世界は既に冷戦構造とは別の姿を見せています。しかし日本国内の考え方は、未だに二大大国の間の冷戦構造を見る見方でしか、世界の動きをみて動いている様にしか見えないのです。
今回の騒動、日本側でもし高市総理が意見を撤回、謝罪をしたとしても、その先で日本人として考えるべき事は何なのか、真剣に国内で議論をすべき時代に入っています。単に総理が謝罪したら終了で、その後は万事従来通りで上手く行く。そんな時代では無いのです。
果たして日本が今のまま中国に強く依存する状況のままで良いのでしょうか。これはレアメタルにしても食料品にしても、経済的な事についてもです。日本人が日本の国家の安全保障をもう少し真剣に考えながら、中国と付き合う時代に入ってきているのではないでしょうか。
「一身独立して一国独立せん」
これは福沢諭吉の「学問のすすめ」の中にある言葉ですが、日本がこの先、自主独立の国家として、日本人の安全を護り、この変動する世界の中で日本の権益を護るためには、やはり国民の中に「一身独立」という気概も必要になりますし、その日本人の意識が高まる先に「一国独立せん」という事もあると思うのです。
今回の高市総理の発言に対しての日本国内の反応を見ていると、日本を中国の朝貢国としたい勢力が幅を利かせているのかとさえ私は思えてしまいます。
もう少し落ち着いて考えてみませんか?