中道改革連合(元公明党)の伊佐議員が今回、中国を訪問して来ました。
今の日本と中国の状況から言っても、この時に訪問しても大した進展は見られない事は、すでに解っていた事ですが、まあネット上(X)に見られる支持者たちの反応というのは、全く現状を認識出来ておらず、語るに値しない内容ばかりです。


そもそも現在の中国と日本の関係悪化の引き金になったのは確かに高市総理大臣の2025年11月7日の衆議院予算委員会での発言にある事は認めます。
でも、果たして高市総理一人の言動でここまで悪化するのでしょうか。
この事について書く前に、私のスタンスについて明確にしておきますが、私は高市総理大臣の熱烈な支持者ではありません。
前にもこのブログで少し書きましたが、私が創価学会の男子部の時、高市女史が選挙に出馬の際に、奈良県婦人部に泣きつき、当時、四月会で創価学会も揺れている中でしたが、高市女史は「当選の暁には創価学会を護る」と言った事から、当時の婦人部は高市女史を支持しました。しかし結果、当選した高市女史はその後、四月会と共に行動したという事がありましたので、私は個人的に高市女史は信用成らない議員と思っていました。
しかしその後、日本の政局の中を見て行く中、岸田政権や石破政権と比較して、高市政権のスタートアップ時の政治姿勢は、それ以前の政権と比較してベターだという判断の下で、現在の高市政権には一定の支持をしています。
しかしだからと言って、高市総理を熱狂的に支持している立場でもありません。また国政の評価は年単位の政治の結果を見て判断すべき事であるので、現段階ではまだまだ様子見をしているというスタンスです。
さて、話を戻します。
そもそも高市総理の「存立危機事態」の発言について、これが国際的な常識を逸した発言をしたと私は考えていません。
ここで当時の国会での発言について振り返りをしてみます。
2025年11月の予算委員会では、高市総理に対し、立憲民主党の岡田克也議員が次の様に質問しました。
「台湾・フィリピン間のバシー海峡が海上封鎖され、その封鎖を解除するために米軍が介入し、中国軍がそれを阻止するため武力行使を行う場合、これは存立危機事態に当たるか?」
当初、高市総理はこの質問について明確な回答をしませんでしたが、岡田議員の執拗な質問に対して、以下の発言をしました。
「戦艦を使い武力行使を伴うなら、どう考えても存立危機事態になり得る」
この発言が全ての始まりでした。
高市総理の発言は、アメリカが台湾海峡で中国の台湾侵攻を切っ掛けとして戦争状態となり、中国艦艇がバシー海峡を封鎖した場合、どの様に振舞うのかという事についての発言です。
以前はアメリカも「一つの中国」という外交スタンスでしたが、バイデン政権の時からこのスタンスを変更し、台湾を一転、認めるスタンスとなりました。そしてその上で、軍事力で中国の台湾侵攻に対してけん制しはじめました。
こういったアメリカの姿勢の変化もあり、この高市総理の発言について、中国共産党政権は「台湾有事が日本の集団的自衛権の行使の可能性を示す発言」として強く反発し、結果として外交問題化したのです。
しかし考えてみて下さい。
まず「集団的自衛権」とは国連憲章第51条にも明記されたものであって、国際法上は何らこの集団的自衛権の行使を認めた発言をしても問題は無い事なのです。あとにも述べますが日本とアメリカは軍事的同盟関係にあります。
一方、中国は近年、国外に対して覇権姿勢を明確に示しており、近年では南シナ海での実行支配の行動をより活発化し、その行動は近隣諸国に対して脅威となっています。フィリピンでは中国艦艇に漁船がぶつけられ、尖閣諸島では中国海警が日本漁船を追い回し、先日は日本の領空を中国軍機が侵犯したのは記憶にある話です。

この高市総理の発言に対して、在大阪中国総領事(今回、いさ氏を中国へアテンドした人物)である薛剣(せつ・けん)がXで2025年11月8日に以下のPOSTをして、この問題は日中間でより大炎上したのです。
「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか。」
この発言は外交上極めて異常な内容で、外交官が一国の宰相に向けての殺害示唆とも受け取れる発言に、海外からも批判がありましたが、日本国内でも多くの批判が噴出しました。
その後、日中両国間の関係は一気に悪化をしていきました。
私が思うに中国は極東アジアでの覇権を強めようとしているのは明確であり、その為の一つの「示威行動」として、高市総理の発言を取り上げ、敢えて日本との国交をこじれさせる事で、日米関係に楔を打ち込もうとしたのかもしれません。
この発言で、日本国内では「高市総理は中国に詫びを入れろ」という発言も見受けられますが、国際法上で特に問題ない発言を、一国の宰相が行った事で、何故わざわざ詫びを入れなければならないのでしょうか。
ここで「存立危機事態」の事について、少し書いてみます。
この存立危機事態というのは2015年の安保法制(平和安全法制)で新設された法律上の定義であり、そこから生まれた概念です。そしてその定義は安保法制の中核をなす「武力攻撃事態等及び存立危機事態法」(平成15年法79号の改正)に明記されています。
この法令本文によると「存立危機事態」について次の様に定義されています。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態 」
高市総理の「存立危機事態」の発言とは、この安保法制を根拠として為されていた訳ですが、では高市総理の発言がそれほど突飛で、日本がまるで中国に対して好戦的な立場にある事を述べたものなのでしょうか。
高市総理は岡田克也議員の質問にあった「台湾・フィリピン間のバシー海峡が海上封鎖され、その封鎖を解除するために米軍が介入し、中国軍がそれを阻止するため武力行使を行う場合」という事について回答しています。

このバシー海峡は日本が中東方面からの原油輸送ルートを始め、日本の海外貿易にとって重要な海峡であり、ここでもし紛争が発生し、中国によって海上封鎖などが行われた場合、日本へのエネルギー供給や様々な資源の交易が完全にストップしてしまう事が想定されます。
これはまさに「我が国の存立が脅かされる」事態となる事は明確な事であり、主権国家の宰相であれば、こういった危機感を持つ事は、何も特別な事ではありません。
また高市総理も「戦艦を使い武力行使を伴うなら」という前提を述べての事からも、この発言はバシー海峡の海上交通が戦争により中国が海上封鎖した事を念頭に述べたもので、それは著しく日本の国益を著しく損ねる事態である事から「存立危機事態」という認識を示した訳です。
また日本はアメリカとの間で「日米安全保障条約」を締結していますので、アメリカが台湾周辺で戦争行為に入ったのであれば、日本はアメリカとの外交関係上、けして「他人事」で居る事は出来ません。
これらの事を考えてみても、高市総理の発言が、日本の宰相として不適切な発言内容では無いと私は考えています。
ただしこの様に言った処で、今の日本には根本的な問題があり、それが今回の高市総理の「存立危機事態」の発言により、如実にその問題が顕在化してしまいました。
一つ目は、日本という国は自国の安全保障体制を、自国でコントロールする事が出来ない国家であるという事です。
今の日本には、防衛力として「自衛隊」は存在しますが、これは正規軍組織ではありません。本来、軍組織とは国内法ではなく国際法の下で行動する組織であり、それが故に他の国では「軍法」「軍司法」を持っています。しかし日本の現行憲法では、これらの事は既定されてもいません。それが故に、もし日本が何れの国から侵攻された場合、アメリカ軍の支援無しに自衛隊だけで自国を護る事は出来ません。
また現行憲法を如何に斜め読みした処で、本来は主権国家であれば当たり前にある集団的自衛権という権利を、今の日本では現行憲法で持つ事は無理がある事であり、現在、安保法制も実は法治国家の根幹を考えると、きわめて危険性のある法律でもあります。
つまるところ、今の日本という国は、自国の安全保障を持つ事が出来ない国家である事が問題であり、自国の安全保障を自分達の国だけでコントロールする事が出来ないという事で、これは詰まるところ戦争のコントロールが自分達の国だけでは制御できない事でもあるのです。
二つ目は、国民自体が「戦争」という事の本質を理解していない事です。
戦争とは国家間の外交の延長線上にある行為であり、要は国家間の利害で互いに合意できない状況になった場合、最後の手段として国家がとりうる行為が戦争なのです。
しかし今の日本人の中で、この戦争という事を理解している人が、どれだけ居るのでしょうか?
この戦争を理解していない事で、日本人の大半は「外交」についても正当に理解出来ていません。今回のいさ氏の訪中でも、多くのPOSTで「対話」という事を言っていましたが、外交で行われるのは「対話」ではなく「交渉」であり、そこには互いの国家の利害の駆け引きが行われるのです。
今の日本人の大半は、戦後八十年、アメリカ軍の傘の下に居て、経済的に発展する事は国民の中でも意識をしてきましたが、国家安全保障という、自分達の国の安全については何ら正面から見据える事もせず、学校教育の場でも子供達に教育すらして来ませんでした。ただ子供達には「日本国憲法があるから日本は戦争は巻き込まれない」と教えるだけで、戦争の起きる仕組み、戦争の内容、戦争の本質、人類史の中で営々と続けられてきた戦争については、一切教育をしていません。
だからいざ国家の間で関係性が悪化すると、その悪化した要因に思考を向ける事が出来ない人が多くなってしまったのでは無いでしょうか。
戦後の日本は戦争から目を逸らした。しかし戦争は日本を見なくなった訳ではないのです。
三つ目は政治の劣化です。
政治には国内政治(内政)と国外政治(外交)の両面がありますが、何れの政治にしても今の日本は劣化が著しくなっています。この背景にはやはり国民の政治への関心、意識の深さ、社会への見方や考え方が関係してきますが、とにかく、政治の劣化が近年著しくなってきています。
民主政治とは独裁政治を生み出す苗床にもなれば、ポピュリズム政治となるリスクを常に孕んでいます。それが故に国民は常に社会の動向に目を向け、政治を監視する事と共に、他者と「言い争い」ではなく「議論」をする能力を持たねばなりません。
しかし今の日本社会には、それらを持つ人がどれだけ存在するのでしょう。
またもし有事となれば、軍組織を指揮命令するのは政治家です。
しかし今の日本の政治家の中に、それを行える政治家が幾人いるのか。そこを考えると私はうすら寒い思いを感じてしまうのです。
最後ですが、今回、いさ氏は中国に訪問した訳ですが、本気で中国との関係をこれまで通りにしたいのであれば、まずは安保法制を廃止にする動きをすべきだったのです。
いまXで山ほどいさ氏を支援するPOSTを投稿する人達も、いさ氏がこういった行動をとる事を徹底して支持し、国内にムーブメントを起こせばいいのです。
そもそも公明党の結党以来、憲法護持、戦争反対を詠ってきた訳ですし、安保法制の成立時には、それまで池田大作会長と懇意であった慶應大学の憲法学者の小林節教授も反対し、同じく池田大作氏と親交のあった平和博士のガルトゥング博士も反対の声明を出していたではありませんか。
そういった声を無視し、自民党に阿諛して安保法制を通過させたのは公明党なのですから、高市総理の「存立危機事態」発言の根拠を公明党が提供した訳で、そんな安保法制を元公明党のいさ氏が廃止にする事を手土産にしていけば、中国の共産党指導部は諸手を上げて、いさ氏を歓待したと思いますよ。
ただ、それをやったとしても、その後の日中関係が、それまでの日中関係と同じであるかは、誰も保障出来ないと思いますけどね。